「どちらも神聖な図形だから通じている」で終わらせず、両方を数として書き下ろしてみました。共通点も相違点も、はっきりした形で出てきます。そして最後に、6と8をつなぐ数が出てきます。
神聖幾何学の文脈でよく出てくる図形ですが、幾何としての定義はとても短く書けます。
この置き方をすると、円の中心は正三角形の格子(三角格子)の上に並びます。端を除く三角格子の内部では、ひとつの中心から見て、いちばん近い中心は6つです。理由は、平面上で同じ大きさの円を、ある円のまわりにぴったり接して並べられる数は6が最大だからです(接触数といいます)。中心どうしの距離 r を直径とする小さな円を各中心に置くと、まわりの6つがちょうど接して並び、中心角は 360 ÷ 6 = 60度。正三角形が敷き詰まります。
ただし「重なる円の数」で数えると6ではありません。半径 r の円どうしは、中心の距離が 2r より近ければ重なります。中心の円と重なるのは、距離 r の6つと距離 √3 r の6つで12個。距離 2r の6つとは、重ならずに1点で接します(下の表の距離で確かめられます)。ここで12個と数えているのは、下の19円図の中央の円です。7円図では中央と重なるのは6個で、有限の配置の端では周囲の数が少なくなります。
2026-10-19 訂正:以前は「ひとつの円はまわりの6つの円と重なる」と書いていましたが、誤りでした。「いちばん近い中心が6つ」と「重なる円の数」を混同していました。
円の中心は、正三角形の格子(三角格子)の上に乗ります。中心からの距離ごとに数えるとこうなります。
| 中心からの距離 | その距離にある円 | そこまでの合計 | 呼び名 |
|---|---|---|---|
| 0 | 1 | 1 | 中心 |
| r | 6 | 7 | シード・オブ・ライフ |
| √3 r(≈1.732 r) | 6 | 13 | — |
| 2r | 6 | 19 | フラワー・オブ・ライフ |
| √7 r(≈2.646 r) | 12 | 31 | — |
| 3r | 6 | 37 | — |
7、19、37、61…… この並びには名前があります。中心つき六角数で、3k² + 3k + 1 という式で出ます。k=1で7、k=2で19、k=3で37。7も19も、恣意的に選ばれた数ではありません。
もうひとつ。2つの円が互いの中心を通るとき、重なった部分はヴェシカ・パイシスと呼ばれるレンズ形になります。2つの交点と2つの中心をつなぐと、正三角形が2つできます。交点どうしの距離は √3 r。上の表に √3 が出てくるのも同じ理由です。
では洛書はどうか。読みもの001で見たとおり、洛書は3×3の魔方陣で、九星気学の後天定位盤そのものです。
こちらは正方格子です。中心のマスを辺か角で囲んでいるのは、上下左右と斜めの8マス。ただし距離はそろっていません。いちばん近いのは上下左右の4マス(距離1)で、斜めの4マスは√2離れています。ここでは中心を囲む一周を「環」として、外へ一周ずつ数えます。
| 中心からの環 | その環のマス | そこまでの合計 | 式 |
|---|---|---|---|
| 0 | 1 | 1 | 1² |
| 1 | 8 | 9 | 3² ←洛書 |
| 2 | 16 | 25 | 5² |
| 3 | 24 | 49 | 7² |
1、9、25、49……こちらは (2k+1)²。フラワー側の 1、7、19、37 とはまったく別の数列です。
| フラワー・オブ・ライフ | 洛書 | |
|---|---|---|
| 格子 | 三角格子 | 正方格子 |
| 中心を囲む数 | 6 | 8 |
| 中心+第1環 | 7 | 9 |
| 環ごとの合計 | 1, 7, 19, 37 | 1, 9, 25, 49 |
| 式 | 3k²+3k+1 | (2k+1)² |
| 1周を割ると | 60度 | 45度 |
数はどこも一致しません。「同じ構造」と言ってしまうと、そこで話が終わってしまいます。実際には違う格子に乗った、別の図形です。
では共通点はないのか。あります。ただしそれは数ではなく、組み立て方のほうです。
1. 中心がひとつある。
2. そのまわりを、中心を囲む層が一周ずつ取り巻く。
3. そして中心は、環のメンバーとして数えない。
層の中の距離は同じとは限りません。フラワー側の2周目には √3 r と 2r の円が、洛書側の1周目には距離1と√2のマスが混ざっています。そろっているのは距離ではなく「何周目か」です(2026-10-20 訂正:以前は「中心から等距離の環」と書いていました)。
3つめが効きます。フラワー・オブ・ライフで意味を持つのはまわりの6円で、中心の円は基準です。洛書でも、方位になるのはまわりの8マスだけ。中央(中宮)には方位がありません。
これは読みもの002で書いた「3×3 − 1 = 8」とまったく同じ話です。中心は数の一員でありながら、方位の一員ではない。この二重の身分が、どちらの図形にもあります。
ここでひとつ、計算すると出てくることがあります。
三角格子は円を6に分け、正方格子は8に分ける。では、両方を同時に載せられる分割はあるのか。
6 と 8 の最小公倍数 = 24 360 ÷ 24 = 15 度
24分割なら、6分割も8分割もそのまま表せます。そして24より小さい数ではできません。
そして東洋の方位体系には、実際に二十四山という15度刻みの分割があります。読みもの002で見た「45度均等説」は、この二十四山を3つずつまとめて八方位にしたものでした。24を8で割れば3、6で割れば4。どちらにも割り切れる。
ここで話を広げすぎないでおきます。二十四節気も24ですが、あちらは理由が違います。読みもの003で書いたとおり、二十四節気は太陽黄経を15度ずつ区切ったもので、6と8の公倍数を狙った結果ではありません。
別々の理由で、たまたま同じ24になっている。これを「だから深いつながりがある」と言うのは行きすぎで、「円を等分するとき15度は扱いやすい数だった」と言うほうが正確です。360は 2·2·2·3·3·5 に分解できて約数が24個もあり、そもそも分けやすい数です。
符合を見つけたときに、それを意味に変換するかどうか。ここは書き手の姿勢が出るところだと思っています。当サイトは符合は符合として出し、意味づけは読む人に預ける方針です。
フラワー・オブ・ライフと洛書は、同じ構造ではありません。三角格子と正方格子、6と8、1・7・19と1・9・25。数はどこも一致しません。
けれども、「中心を置き、そのまわりに等しい環を並べ、中心は数えない」という組み立て方は共通しています。洋の東西で、円を等分して世界を記述しようとしたときに、同じ発想にたどり着いている。一致しているのは数ではなく、考え方のほうです。
個人的には、無理に一致させるよりここが違う、と言えるほうが面白いと思っています。違いがわかると、それぞれが何を選んだのかが見えてくるからです。三角格子を選べば6が出て、正方格子を選べば8が出る。八方位という体系は、正方格子を選んだ帰結です。
三角格子 中心を a·(1,0) + b·(1/2, √3/2) に置き、原点からの距離で分類 距離 0 / 1 / √3 / 2 / √7 / 3 に、それぞれ 1 / 6 / 6 / 6 / 12 / 6 個 正方格子 チェビシェフ距離で分類し、各環 8k 個(k≥1) 接触数 平面で同半径の円が中心の円に接する最大数は6(三角格子で最も近い点が6つになる理由) 重なり 半径 r の円は中心間距離が 2r 未満なら重なる → 距離 r と √3 r の計12円。2r の6円とは接するだけ 最小公倍数 lcm(6, 8) = 24
図の円はすべてこの格子から生成しており、手で置いたものはありません。点にカーソルを合わせると中心からの距離が出ます。