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九星の盤は魔方陣である
── ただし定位盤だけ

後天定位盤は、洛書と同じ3×3の魔方陣です。縦・横・斜めのどこを足しても15になります。ところが、実際に運勢を見るときに使う年盤・月盤ではそれが成立しません。9通りすべてを計算して、崩れ方に規則があることを確かめました。

2026-09-06 / 陰陽道ラボ

まず、定位盤は確かに魔方陣

九星気学の基準になる盤を後天定位盤といいます。中央(中宮)に五黄土星を置き、北に一白、南に九紫……と九つの星を配置したものです。ここでは南を上にして描きます。

灰色のマスが盤、青いマスがその行・列の和です。

南東4四緑
9九紫
南西2二黒
15
3三碧
中宮5五黄
西7七赤
15
北東8八白
1一白
北西6六白
15
15
15
15
斜めの和 \ 15 / 15
後天定位盤(中宮=五黄土星)

縦3本、横3本、斜め2本。8本すべての和が15になります。これが古代中国の洛書であり、3×3の魔方陣です。数学的には、1〜9を並べて縦横斜めの和を等しくする方法は、回転と鏡像を除けばこれ1通りしかありません。

中宮(ちゅうぐう)… 盤の中央のこと。ここにどの星が入るかで盤全体の配置が決まります。
定位盤(ていいばん)… 中宮が五黄土星のときの、基準になる配置。

しかし、実際に使う盤は回っている

吉方位を見るときに使うのは定位盤ではありません。その年の九星を中宮に置いた年盤と、その節月の九星を中宮に置いた月盤です。中宮に入る星は毎年・毎月変わります。

盤が回るとき、各宮の星は同じ量だけずれます。中宮が五黄から四緑になれば、すべての宮の星が1つずつ戻る。ただし1より小さくなった星は9へ折り返します。その結果がこれです。

南東3三碧
8八白
南西1一白
12
2二黒
中宮4四緑
西6六白
12
北東7七赤
9九紫
北西5五黄
21
12
21
12
斜めの和 \ 12 / 12
四緑木星が中宮に来た盤

横の和は上から 12 / 12 / 21、縦は 12 / 21 / 12、斜めは 12 と 12もう魔方陣ではありません。

「九星の盤は魔方陣である」という説明はよく見かけます。それ自体は間違いではないのですが、それは定位盤についての話で、実際に運勢を見るときに広げている盤では成立していない。この区別に触れた記述は、少なくとも私が探した範囲では見つかりませんでした。

9通りすべてを計算する

中宮に入りうる星は9つなので、盤も9通りです。全部作って、8本の線の和を数えました。

一白水星 中宮
9
5
7
8
1
3
4
6
2
和 12 と 21
二黒土星 中宮
1
6
8
9
2
4
5
7
3
和 6 と 15
三碧木星 中宮
2
7
9
1
3
5
6
8
4
和 9 と 18
四緑木星 中宮
3
8
1
2
4
6
7
9
5
和 12 と 21
五黄土星 中宮
4
9
2
3
5
7
8
1
6
和 15 のみ
六白金星 中宮
5
1
3
4
6
8
9
2
7
和 9 と 18
七赤金星 中宮
6
2
4
5
7
9
1
3
8
和 12 と 21
八白土星 中宮
7
3
5
6
8
1
2
4
9
和 15 と 24
九紫火星 中宮
8
4
6
7
9
2
3
5
1
和 9 と 18

結果は、驚くほどきれいでした。

どの盤も、8本の線の和はちょうど2種類しか出ません。そしてその2つの差は、必ず9です。魔方陣なのは五黄中宮の定位盤だけで、それ以外の8枚はすべてこの形をしています。

中宮の星ずれ8本の線の和折り返しがなければ
一白水星-412 と 213
二黒土星-36 と 156
三碧木星-29 と 189
四緑木星-112 と 2112
五黄土星+015 のみ15
六白金星+19 と 1818
七赤金星+212 と 2121
八白土星+315 と 2424
九紫火星+49 と 1827

「ずれ」は定位盤からのずれ幅(中宮の星 − 5)。「折り返しがなければ」は、はみ出した星が枠に戻らないと仮定したときの和で、15+3×ずれ です。実際の和は、この値に9を足し引きした2つになっています。たとえば一白中宮なら 3 に対して 12(=3+9)と 21(=3+18)。

なぜ2種類になるのか

理由は単純で、そこが面白いところです。

盤を回すというのは、9つの星すべてを同じ量だけずらす操作です。ずれ幅を d とすると、折り返しさえなければ、3つの星でできた線の和は必ず 15 + 3d になります。1本ずつ計算する必要すらありません。

実際には1〜9の枠から出た星が折り返します。9を超えた星は9を引き、1を下回った星は9を足す。枠から出る星は盤全体でちょうど |d| 個です。したがって線の和はこうなります。

w = その線で折り返した星の数

  d > 0 のとき   線の和 = 15 + 3d − 9w
  d < 0 のとき   線の和 = 15 + 3d + 9w

ずれが正なら大きい星が上からはみ出して9だけ小さくなり、負なら小さい星が下からはみ出して9だけ大きくなる。どちらか一方しか起きません。

あとは、折り返した星が各線に何個入るかだけの問題です。折り返す星は盤全体で |d| 個しかなく、それが3マスずつの8本に散らばる。実際に数えると、どの盤でも「その線に何個入るか」は連続する2つの値にしかならない。だから和は2種類、差は9の1倍ぶん。

言い換えると、魔方陣が壊れるのは折り返しのせいだけで、折り返しは9の倍数でしか効きません。だから崩れ方も9刻みに揃う。乱れているように見えて、乱れ方が制御されています。

回しても壊れないもの

崩れる話ばかりしましたが、回転で保たれる性質もあります。

1. 全体の和は必ず45

1から9までを1回ずつ使う点は変わらないので、9マスの合計は常に45です。9枚とも45。

2. 向かい合う宮の和は、中宮の2倍と一致する(9で割った余りで)

定位盤では、北1と南9、東3と西7、南東4と北西6、北東8と南西2。向かい合う宮どうしの和はすべて10で、これは中宮5の2倍です。魔方陣の中心対称性そのものです。

盤を回すと和は10でなくなります。しかし調べてみると、どの盤でも、向かい合う宮の和は「中宮の星×2」と9で割った余りが一致します。たとえば四緑中宮の盤なら 4×2=8 で、実際の対の和は 8 か 17(=8+9)のどちらかです。

中宮北+南東+西南東+北西北東+南西中宮×2
一白水星111111112
二黒土星13134134
三碧木星1566156
四緑木星178888
五黄土星1010101010
六白金星312121212
七赤金星51414514
八白土星7716716
九紫火星999918

つまり、魔方陣としての「線の和が等しい」性質は失われても、「向かい合う宮の対称性」は9の世界で生き残る。九星気学が向かい合う方位の関係(五黄殺に対する暗剣殺など)を重く見るのは、この対称性が回転しても崩れないことと無関係ではないはずです。

確かめ方

この記事の数字はすべて、当サイトの計算エンジンで出したものです。盤の生成は次の1行に尽きます。

d = 中宮の星 − 5
盤[方位] = ((定位盤[方位] − 1 + d) mod 9) + 1

この式で作った盤の配置(八方位すべて、五黄殺・暗剣殺・月破・本命殺の位置、本命星ごとの吉方位)は、外部の気学サイト2つと突き合わせて一致を確認しています。線の和・全体の和・対の和は、9通り×8本を総当たりで計算しました。

占いの分野では「そう言われている」で止まる話が多いのですが、九星の盤は数の並びなので、こうして最後まで確かめられます。確かめてみると、伝承されてきた形のほうが思ったより整っていた、という結論になりました。

この盤を使うツール