後天定位盤は、洛書と同じ3×3の魔方陣です。縦・横・斜めのどこを足しても15になります。ところが、実際に運勢を見るときに使う年盤・月盤ではそれが成立しません。9通りすべてを計算して、崩れ方に規則があることを確かめました。
九星気学の基準になる盤を後天定位盤といいます。中央(中宮)に五黄土星を置き、北に一白、南に九紫……と九つの星を配置したものです。ここでは南を上にして描きます。
灰色のマスが盤、青いマスがその行・列の和です。
縦3本、横3本、斜め2本。8本すべての和が15になります。これが古代中国の洛書であり、3×3の魔方陣です。数学的には、1〜9を並べて縦横斜めの和を等しくする方法は、回転と鏡像を除けばこれ1通りしかありません。
吉方位を見るときに使うのは定位盤ではありません。その年の九星を中宮に置いた年盤と、その節月の九星を中宮に置いた月盤です。中宮に入る星は毎年・毎月変わります。
盤が回るとき、各宮の星は同じ量だけずれます。中宮が五黄から四緑になれば、すべての宮の星が1つずつ戻る。ただし1より小さくなった星は9へ折り返します。その結果がこれです。
横の和は上から 12 / 12 / 21、縦は 12 / 21 / 12、斜めは 12 と 12。もう魔方陣ではありません。
「九星の盤は魔方陣である」という説明はよく見かけます。それ自体は間違いではないのですが、それは定位盤についての話で、実際に運勢を見るときに広げている盤では成立していない。この区別に触れた記述は、少なくとも私が探した範囲では見つかりませんでした。
中宮に入りうる星は9つなので、盤も9通りです。全部作って、8本の線の和を数えました。
結果は、驚くほどきれいでした。
どの盤も、8本の線の和はちょうど2種類しか出ません。そしてその2つの差は、必ず9です。魔方陣なのは五黄中宮の定位盤だけで、それ以外の8枚はすべてこの形をしています。
| 中宮の星 | ずれ | 8本の線の和 | 折り返しがなければ |
|---|---|---|---|
| 一白水星 | -4 | 12 と 21 | 3 |
| 二黒土星 | -3 | 6 と 15 | 6 |
| 三碧木星 | -2 | 9 と 18 | 9 |
| 四緑木星 | -1 | 12 と 21 | 12 |
| 五黄土星 | +0 | 15 のみ | 15 |
| 六白金星 | +1 | 9 と 18 | 18 |
| 七赤金星 | +2 | 12 と 21 | 21 |
| 八白土星 | +3 | 15 と 24 | 24 |
| 九紫火星 | +4 | 9 と 18 | 27 |
「ずれ」は定位盤からのずれ幅(中宮の星 − 5)。「折り返しがなければ」は、はみ出した星が枠に戻らないと仮定したときの和で、15+3×ずれ です。実際の和は、この値に9を足し引きした2つになっています。たとえば一白中宮なら 3 に対して 12(=3+9)と 21(=3+18)。
理由は単純で、そこが面白いところです。
盤を回すというのは、9つの星すべてを同じ量だけずらす操作です。ずれ幅を d とすると、折り返しさえなければ、3つの星でできた線の和は必ず 15 + 3d になります。1本ずつ計算する必要すらありません。
実際には1〜9の枠から出た星が折り返します。9を超えた星は9を引き、1を下回った星は9を足す。枠から出る星は盤全体でちょうど |d| 個です。したがって線の和はこうなります。
w = その線で折り返した星の数 d > 0 のとき 線の和 = 15 + 3d − 9w d < 0 のとき 線の和 = 15 + 3d + 9w
ずれが正なら大きい星が上からはみ出して9だけ小さくなり、負なら小さい星が下からはみ出して9だけ大きくなる。どちらか一方しか起きません。
あとは、折り返した星が各線に何個入るかだけの問題です。折り返す星は盤全体で |d| 個しかなく、それが3マスずつの8本に散らばる。実際に数えると、どの盤でも「その線に何個入るか」は連続する2つの値にしかならない。だから和は2種類、差は9の1倍ぶん。
言い換えると、魔方陣が壊れるのは折り返しのせいだけで、折り返しは9の倍数でしか効きません。だから崩れ方も9刻みに揃う。乱れているように見えて、乱れ方が制御されています。
崩れる話ばかりしましたが、回転で保たれる性質もあります。
1から9までを1回ずつ使う点は変わらないので、9マスの合計は常に45です。9枚とも45。
定位盤では、北1と南9、東3と西7、南東4と北西6、北東8と南西2。向かい合う宮どうしの和はすべて10で、これは中宮5の2倍です。魔方陣の中心対称性そのものです。
盤を回すと和は10でなくなります。しかし調べてみると、どの盤でも、向かい合う宮の和は「中宮の星×2」と9で割った余りが一致します。たとえば四緑中宮の盤なら 4×2=8 で、実際の対の和は 8 か 17(=8+9)のどちらかです。
| 中宮 | 北+南 | 東+西 | 南東+北西 | 北東+南西 | 中宮×2 |
|---|---|---|---|---|---|
| 一白水星 | 11 | 11 | 11 | 11 | 2 |
| 二黒土星 | 13 | 13 | 4 | 13 | 4 |
| 三碧木星 | 15 | 6 | 6 | 15 | 6 |
| 四緑木星 | 17 | 8 | 8 | 8 | 8 |
| 五黄土星 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 |
| 六白金星 | 3 | 12 | 12 | 12 | 12 |
| 七赤金星 | 5 | 14 | 14 | 5 | 14 |
| 八白土星 | 7 | 7 | 16 | 7 | 16 |
| 九紫火星 | 9 | 9 | 9 | 9 | 18 |
つまり、魔方陣としての「線の和が等しい」性質は失われても、「向かい合う宮の対称性」は9の世界で生き残る。九星気学が向かい合う方位の関係(五黄殺に対する暗剣殺など)を重く見るのは、この対称性が回転しても崩れないことと無関係ではないはずです。
この記事の数字はすべて、当サイトの計算エンジンで出したものです。盤の生成は次の1行に尽きます。
d = 中宮の星 − 5 盤[方位] = ((定位盤[方位] − 1 + d) mod 9) + 1
この式で作った盤の配置(八方位すべて、五黄殺・暗剣殺・月破・本命殺の位置、本命星ごとの吉方位)は、外部の気学サイト2つと突き合わせて一致を確認しています。線の和・全体の和・対の和は、9通り×8本を総当たりで計算しました。
占いの分野では「そう言われている」で止まる話が多いのですが、九星の盤は数の並びなので、こうして最後まで確かめられます。確かめてみると、伝承されてきた形のほうが思ったより整っていた、という結論になりました。