方位を24等分した「二十四山」は、1つが15度。時間も24等分すれば1つが1時間で、地球は1時間に15度回ります。同じ24、同じ15度。ではこの二つは同じものなのか ── 太陽の方位角が実際に何度ずつ動くかを計算して確かめました。
二十四山は、円を24等分して1区画15度とし、それぞれに名前を付けたものです。名前の内訳がきれいに割れています。
| 種類 | 数 | 中身 | 置かれる位置 |
|---|---|---|---|
| 十二支 | 12 | 子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥 | 四正の中央と、四隅の両脇 |
| 天干 | 8 | 癸甲乙丙丁庚辛壬 | 四正の両脇 |
| 四維 | 4 | 艮巽坤乾 | 四隅の中央 |
| 合計 24 | 1つあたり 360 ÷ 24 = 15度 | ||
十干は10個あるのに、使われるのは8個です。抜けているのは戊と己 ── 五行でいう土。土は中央に属して方位を持たないからです。これは後天定位盤の中宮が五黄土星であることと同じ理屈で、八卦で中宮だけが卦を持たないのとも同じです。「中央には方位がない」という同じ考えが、三つの体系で同じ形に出ています。
残る8つの天干も、でたらめに並んでいるわけではありません。五行と方位が一致します。
壬・癸 = 水 → 北 (子の両脇) 甲・乙 = 木 → 東 (卯の両脇) 丙・丁 = 火 → 南 (午の両脇) 庚・辛 = 金 → 西 (酉の両脇) 戊・己 = 土 → 中央(どこにも入らない)
四維の艮・巽・坤・乾は、後天八卦で四隅に入る卦そのものです。十二支・十干・八卦という別々の体系が、15度刻みの同じ目盛りの上で場所を分け合っているのが二十四山です。
記事002で、八方位の分け方に45度均等説と30/60説の2つがあることを書きました。二十四山を目盛りにして、この2つを測り直してみます。
| 八方位 | 範囲(45度均等説) | 入る3山 | 型 |
|---|---|---|---|
| 北 | 337.5°〜 22.5° | 壬・子・癸 | 干・支・干 |
| 北東 | 22.5°〜 67.5° | 丑・艮・寅 | 支・維・支 |
| 東 | 67.5°〜112.5° | 甲・卯・乙 | 干・支・干 |
| 南東 | 112.5°〜157.5° | 辰・巽・巳 | 支・維・支 |
| 南 | 157.5°〜202.5° | 丙・午・丁 | 干・支・干 |
| 南西 | 202.5°〜247.5° | 未・坤・申 | 支・維・支 |
| 西 | 247.5°〜292.5° | 庚・酉・辛 | 干・支・干 |
| 北西 | 292.5°〜337.5° | 戌・乾・亥 | 支・維・支 |
8方位すべてがちょうど3山ぶん。しかも四正はすべて「干・支・干」、四隅はすべて「支・維・支」という同じ型になります。45度 ÷ 15度 = 3 なので当たり前に見えますが、当たり前になるのは境界の位置が合っているときだけです。
ただし、これで30/60説が間違いだということにはなりません。30/60説は二十四山ではなく、十二支12分割(各30度)を目盛りにしているからです。子を30度幅に取れば、境界は必ず15度・45度…に来ます。その目盛りの上では、30/60説のほうが割り切れています。
つまりこれは「どちらの目盛りを正とするか」の選択であって、計算の正誤ではありません。当サイトは45度均等説・真北基準を採っていますが、それは二十四山の目盛りに乗るからで、30/60説の人は十二支の目盛りに乗せているだけです。記事002で測ったとおり、この選択で実在の行き先79件のうち26件(32.9%)の判定が変わります。
吉方位ナビが持っている全国79件の神社・霊場・温泉を、東京都庁を基準に二十四山で分類しました。
庚 (255°) 32件 ████████████████████████████████ 癸 ( 15°) 8件 ████████ 酉 (270°) 8件 ████████ 子 ( 0°) 5件 █████ 申 (240°) 5件 █████ 乾 (315°) 5件 █████ 辛 (285°) 4件 ████ 甲 ( 75°) 3件 ███ 坤 (225°) 3件 ███ 戌 (300°) 2件 ██ 壬 (345°) 2件 ██ 巳 (150°) 1件 █ 丁 (195°) 1件 █ 使われた山 13 / 24 空っぽの山 丑・艮・寅・卯・乙・辰・巽・丙・午・未・亥
庚(255度)だけに32件、全体の4割が集中しています。日本列島が東京から見て西南西に伸びているためで、記事002で見つけた偏りがそのまま出ています。24等分は日本の地理に対して細かすぎるとも言えます ── そして庚は、30/60説がちょうど真ん中で割る山です。
ここからが本題です。24という数は、方位だけでなく時間にも使われます。
方位:360度 ÷ 24 = 15度 (二十四山) 時間:360度 ÷ 24 = 1時間 (地球の自転) → 地球は1時間に15度回る
しかも十二支は時刻にも使われます。子の刻は23時から1時、午の刻は11時から13時。正午の「午」はここから来ています。方位の十二支と時刻の十二支は、同じ名前で、同じ12分割で、同じ30度・2時間です。
これだけ揃っていると、「太陽は1時間に山を1つ分、15度ずつ動く」と言いたくなります。確かめました。
東京(35.6895°N, 139.6917°E)で、春分・夏至・冬至の日の太陽の方位角を1分刻みで計算し、1時間あたりの変化を出しました。
| 日 | 日の出方位 → 日の入り方位 | 総移動 | 日中の平均 | 最小〜最大 | 比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 春分 | 90.4° → 269.8° | 179.4° | 14.99 度/時 | 8.9 〜 25.6 | 2.9倍 |
| 夏至 | 60.8° → 299.2° | 238.5° | 16.56 度/時 | 7.6 〜 64.8 | 8.5倍 |
| 冬至 | 119.5° → 240.7° | 121.2° | 12.67 度/時 | 9.4 〜 16.0 | 1.7倍 |
答えは「動かない」です。瞬間の速さは、夏至の一日のなかだけで7.6度/時から64.8度/時まで、8.5倍も変わります。朝は山ひとつ分すら動かず、南中前後の1時間では4つ以上またぎます。
15度/時で動いているのは時角のほうです。時角は地球の自転そのものなので、必ず1時間に15度。ところが方位角は、その動きを地平線に投影したものです。太陽が高いところを通る日ほど、投影が引き伸ばされます。
表をもう一度見ると、春分の日中平均が 14.99 度/時です。15にほぼ一致していますが、これは偶然ではありません。
春分は赤緯 0 → 太陽は真東から出て真西に沈む 方位角の移動 = 90° → 270° = ちょうど 180° 日の出から日の入りまで = ちょうど 12時間 180 ÷ 12 = 15 度/時
定義から出てくる値です。春分に限って、平均だけは15度/時になる。ただし瞬間の速さは8.9度/時から25.6度/時まで3倍近く変わっているので、「1時間に15度ずつ進む」という描像はこの日でも正しくありません。
(計算値が 90.4° → 269.8°、11.97時間とわずかにずれるのは、日の出・日の入りを大気差と太陽の視半径を込みで高度 −0.833度としているためです。記事005と同じ条件で計算しています。)
| 「同じ」に見えるもの | 実際は |
|---|---|
| 二十四山の24 と 一日の24時間 | どちらも円を24等分しただけ。共通するのはそこまで |
| 方位の15度 と 自転の15度/時 | 自転(時角)は必ず15度/時。方位角は違う |
| 方位の十二支 と 時刻の十二支 | 名前と分割数は同じ。太陽がそのとおりに動くわけではない |
二十四山が15度なのは、8つの天干と12の十二支と4つの卦を同じ円に並べるには24区画が要るからです。時間が24なのは自転を24で割ったから。どちらも24ですが、由来は別々で、太陽の見かけの動きがその目盛りを刻んでいるわけではありません。
記事006で、フラワー・オブ・ライフの6と洛書の8の最小公倍数が24になることを書きました。そこでも同じことを書いています ── 数が一致することと、意味が同じであることは別です。一致は一致として面白く、そこで止めておくのがいちばん正確だと考えています。
読みもの 005 ── なぜ神社は特定の方角に建つのか 日の出は真東ではありません。東京で夏至60度、冬至118度。至点では方位がほとんど動かない理由も、この記事と同じ計算から出ています。 読む →