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読みもの / 011

通変星は五芒星の上にある
── 十神と格言を一本の規則で

四柱推命の通変星は10種類あり、名前だけを見ると覚えにくい表です。ところが十干を五角形の上に置くと、10種類は「日干から何歩目か」と「陰陽が同じか違うか」の2つだけで決まっていました。さらに、昔から言われてきた格言のうち7つが、同じひとつの規則から出てきます。ただし、全部がきれいに割り切れたわけではありません。

2026-09-23 / 陰陽道ラボ

十干は五角形を二周する

十干は、五行と陰陽の組み合わせです。木に甲(陽)と乙(陰)、火に丙と丁、土に戊と己、金に庚と辛、水に壬と癸。5つの五行 × 2つの陰陽 = 10です。

記事004で、五行を五角形の頂点に置くと、外周の辺が相生(生む関係)、内側の星が相剋(剋す関係)になることを書きました。十干は、その五角形の各頂点に陽と陰がひとつずつ座ったものです。

甲 乙 木 丙 丁 火 戊 己 土 庚 辛 金 壬 癸 水 外周の辺 = 相生(生む) 内側の星 = 相剋(剋す) 各頂点に十干が2つずつ 大きい字=陽(甲丙戊庚壬) 小さい字=陰(乙丁己辛癸) 5(五行)× 2(陰陽)= 10
図1 五行の五角形に十干を置いたもの。外周をひと回りすると相生、星をたどると相剋。各頂点に陽の干と陰の干がひとつずつ乗っています。

通変星は「自分から何歩目か」

通変星は、日干から見たほかの十干との関係です。日干の五行を「0歩」として、五角形を時計回り(相生の向き)に数えてみます。

生む 生まれる 剋す 剋される 0歩 自分 比肩・劫財 1歩 表現 食神・傷官 2歩 財 偏財・正財 3歩 実行力 偏官・正官 4歩 知性 偏印・印綬 日干の五行を「0歩」として、 五角形を時計回りに何歩目かで グループが決まる。 1歩・4歩 = 外周の辺(生) 2歩・3歩 = 内側の星(剋) 各グループの2つは 陰陽が同じか違うかで分かれる (左=同じ、右=違う)
図2 日干の五行を0歩とした五角形。1歩先は「自分が生む」相手、2歩先は「自分が剋す」相手、3歩先は「自分を剋す」相手、4歩先は「自分を生む」相手です。
歩数日干との関係つながり方陰陽が同じ陰陽が違う
0歩同じ五行—比肩劫財
1歩日干が生む外周の辺食神傷官
2歩日干が剋す内側の星偏財正財
3歩日干を剋す内側の星偏官正官
4歩日干を生む外周の辺偏印印綬
日干10種 × 相手10種 = 100通りをすべて計算し、通変星が「歩数」と「陰陽が同じか」の2つだけで決まることを確かめました。例外はありません。通変星の10 = 歩数5 × 陰陽2 は、十干そのものの10 = 五行5 × 陰陽2 と同じ形をしています。

図にすると、グループの性格の違いも形で見えてきます。表現(食神・傷官)と知性(偏印・印綬)は、日干と外周の辺でつながる「隣」、財と実行力は、内側の星でつながる「向こう側」です。生む・生まれるという穏やかな関係は隣どうしに、剋す・剋されるという緊張した関係は星の対角線に割り当てられています。

星どうしの剋し合いも、同じ規則で

通変星どうしにも、剋し合う関係があります。これも五角形の上の規則で書けます。

どの星も、五角形を 2歩進んだ先にいる「陰陽が同じ星」を剋す

「2歩進む」は相剋の向き、「陰陽が同じ」は同じ陰陽どうしの剋が強いとされることに対応します。この矢印を10本すべて引くと、図のように五芒星が2つできました。日干と陰陽が同じ5つの星(比肩・食神・偏財・偏官・偏印)が内側の五芒星、違う5つの星(劫財・傷官・正財・正官・印綬)が外側の五芒星をつくります。

1 7 3 比肩 食神 偏財 偏官 偏印 6 2 5 4 劫財 傷官 正財 正官 印綬 内側の星 日干と陰陽が同じ5つ 外側の星 日干と陰陽が違う5つ 番号=知られた言い回し 1 食神制殺 2 傷官見官 3 梟神奪食 4 傷官佩印 5 貪財壊印 6 劫財(財を奪う) 7 七殺攻身
図3 通変星が剋す相手に矢印を引いたもの。内側と外側に五芒星がひとつずつでき、番号を付けた7本には昔から名前の付いた言い回しがあります。
星剋す相手知られている言い回し
食神偏官(七殺)食神制殺 ── 食神が七殺を抑える
傷官正官傷官見官 ── 傷官が正官を傷つける
偏印食神梟神奪食 ── 偏印(梟)が食神を奪う
印綬傷官傷官佩印 ── 印が傷官を抑えて整える
正財印綬貪財壊印 ── 財が印を壊す
劫財正財劫財 ── 名前そのものが「財を奪う(劫奪する)」の意味
偏官比肩の位置 = 日干自身七殺攻身 ── 七殺が自分を攻める
比肩偏財名前の付いた格言は確認できず
正官劫財名前の付いた格言は確認できず
偏財偏印名前の付いた格言は確認できず
10本の矢印のうち7本に、昔から名前の付いた言い回しがありました。どれも「五芒星の辺を1本たどる」だけで出てきます。残りの3本は、当サイトが調べた範囲では名前のある格言を見つけられませんでした(存在しないという意味ではありません)。

なかでも目を引くのが七殺攻身です。偏官(七殺)が剋す相手は比肩の位置、つまり日干そのもの。「七殺が自分を攻める」という言い回しは、この矢印を言葉にしたものです。

割り切れないところ ── 吉と凶の分け方

ここまでは幾何できれいに割り切れました。では、星の吉凶はどうでしょうか。

清代の命理書『子平真詮』に、次の一節があります。

財官印食,此用神之善而順用之者也;殺傷梟刃,此用神之不善而逆用之者也。 『子平真詮』論用神

財・官(正官)・印(印綬)・食(食神)は「善」で、そのまま活かす。殺(七殺)・傷(傷官)・梟(偏印)・刃(陽刃)は「不善」で、抑えて使う ── という意味です。

版によって一字違います。当サイトが確認した原文のうち、ひとつは「殺傷梟刃」(梟=偏印)、もうひとつは「煞傷劫刃」(劫=劫財)でした。どちらが元の字かは確かめられていません。
また、これは星そのものに吉凶があるという話ではなく、月の支から取る「用神」をそのまま使うか、抑えて使うかという扱い方の話です。現代の解説には「十神そのものに吉凶はない」とはっきり書くものも多くあります。

そのうえで、この善・不善が「歩数」と「陰陽」で決まっているかを確かめました。

グループ陰陽が同じ星陰陽が違う星善になるのは
表現(1歩)食神 = 善傷官 = 不善同じほう
財(2歩)偏財 = 善正財 = 善両方
実行力(3歩)偏官 = 不善正官 = 善違うほう
知性(4歩)偏印 = 不善印綬 = 善違うほう

決まっていません。表現のグループだけ向きが逆で、財は両方とも善です。「陰陽が同じだから凶」のような一段目の規則では説明できません。

ところが、その星が誰を剋すかという二段目で見ると、ほとんど説明がつきます。

星分類剋す相手説明がつくか
食神善不善の七殺を抑えるつく
印綬善不善の傷官を抑えるつく
偏財善不善の偏印(梟)を抑えるつく
正官善劫財(版によって不善)を抑えるつく
傷官不善善の正官を傷つけるつく
偏印不善善の食神を奪うつく
偏官不善日干自身を攻めるつく
正財善善の印綬を壊すつかない
善・不善に分類された8つの星のうち、7つは「誰を剋すか」で説明がつき、正財ひとつだけが説明できませんでした。正財は善に入っているのに、善の印綬を剋します。しかもそれには「貪財壊印」という、はっきり悪い意味の格言まで付いています。

なお、これは当サイトが幾何の上で見つけた規則性です。『子平真詮』がこの理屈で分けたという記録を見たわけではありません。

まとめ

通変星の表は、覚えるものではなく2つの数から出てくるものでした。五角形の上で日干から何歩目か(5通り)と、陰陽が同じか違うか(2通り)。星どうしの剋し合いは二つの五芒星になり、格言の多くはその辺の上に乗っています。

ただし、どの星を善とするかまでは幾何だけでは決まりませんでした。一段目では割り切れず、二段目でも正財が残ります。図形で説明できる範囲と、流派が経験や価値判断で決めてきた範囲の境目が、ちょうどそこにあるのだと思います。

この記事の規則は、四柱推命ナビがそのまま計算に使っています。自分の命式の通変星が、五角形のどこにあるかを確かめてみてください。