「どちらも神聖な図形だから通じている」で終わらせず、両方を数として書き下ろしてみました。共通点も相違点も、はっきりした形で出てきます。そして最後に、6と8をつなぐ数が出てきます。
神聖幾何学の文脈でよく出てくる図形ですが、幾何としての定義はとても短く書けます。
この置き方をすると、ひとつの円はまわりの6つの円と重なります。7つでも5つでもなく、必ず6つ。理由は単純で、平面上で同じ大きさの円を中心の円のまわりにぴったり接して並べられる数は6が最大だからです(接触数といいます)。6つ並べると中心角はちょうど 360 ÷ 6 = 60度。正三角形が敷き詰まります。
円の中心は、正三角形の格子(三角格子)の上に乗ります。中心からの距離ごとに数えるとこうなります。
| 中心からの距離 | その距離にある円 | そこまでの合計 | 呼び名 |
|---|---|---|---|
| 0 | 1 | 1 | 中心 |
| r | 6 | 7 | シード・オブ・ライフ |
| √3 r(≈1.732 r) | 6 | 13 | — |
| 2r | 6 | 19 | フラワー・オブ・ライフ |
| √7 r(≈2.646 r) | 12 | 31 | — |
| 3r | 6 | 37 | — |
7、19、37、61…… この並びには名前があります。中心つき六角数で、3k² + 3k + 1 という式で出ます。k=1で7、k=2で19、k=3で37。7も19も、恣意的に選ばれた数ではありません。
もうひとつ。2つの円が互いの中心を通るとき、重なった部分はヴェシカ・パイシスと呼ばれるレンズ形になります。2つの交点と2つの中心をつなぐと、正三角形が2つできます。交点どうしの距離は √3 r。上の表に √3 が出てくるのも同じ理由です。
では洛書はどうか。読みもの001で見たとおり、洛書は3×3の魔方陣で、九星気学の後天定位盤そのものです。
こちらは正方格子です。中心のマスに接しているのは、上下左右と斜めで8マス。距離ごとに数えるとこうなります。
| 中心からの環 | その環のマス | そこまでの合計 | 式 |
|---|---|---|---|
| 0 | 1 | 1 | 1² |
| 1 | 8 | 9 | 3² ←洛書 |
| 2 | 16 | 25 | 5² |
| 3 | 24 | 49 | 7² |
1、9、25、49……こちらは (2k+1)²。フラワー側の 1、7、19、37 とはまったく別の数列です。
| フラワー・オブ・ライフ | 洛書 | |
|---|---|---|
| 格子 | 三角格子 | 正方格子 |
| 中心を囲む数 | 6 | 8 |
| 中心+第1環 | 7 | 9 |
| 環ごとの合計 | 1, 7, 19, 37 | 1, 9, 25, 49 |
| 式 | 3k²+3k+1 | (2k+1)² |
| 1周を割ると | 60度 | 45度 |
数はどこも一致しません。「同じ構造」と言ってしまうと、そこで話が終わってしまいます。実際には違う格子に乗った、別の図形です。
では共通点はないのか。あります。ただしそれは数ではなく、組み立て方のほうです。
1. 中心がひとつある。
2. そのまわりに、中心から等距離の環が並ぶ。
3. そして中心は、環のメンバーとして数えない。
3つめが効きます。フラワー・オブ・ライフで意味を持つのはまわりの6円で、中心の円は基準です。洛書でも、方位になるのはまわりの8マスだけ。中央(中宮)には方位がありません。
これは読みもの002で書いた「3×3 − 1 = 8」とまったく同じ話です。中心は数の一員でありながら、方位の一員ではない。この二重の身分が、どちらの図形にもあります。
ここでひとつ、計算すると出てくることがあります。
三角格子は円を6に分け、正方格子は8に分ける。では、両方を同時に載せられる分割はあるのか。
6 と 8 の最小公倍数 = 24 360 ÷ 24 = 15 度
24分割なら、6分割も8分割もそのまま表せます。そして24より小さい数ではできません。
そして東洋の方位体系には、実際に二十四山という15度刻みの分割があります。読みもの002で見た「45度均等説」は、この二十四山を3つずつまとめて八方位にしたものでした。24を8で割れば3、6で割れば4。どちらにも割り切れる。
ここで話を広げすぎないでおきます。二十四節気も24ですが、あちらは理由が違います。読みもの003で書いたとおり、二十四節気は太陽黄経を15度ずつ区切ったもので、6と8の公倍数を狙った結果ではありません。
別々の理由で、たまたま同じ24になっている。これを「だから深いつながりがある」と言うのは行きすぎで、「円を等分するとき15度は扱いやすい数だった」と言うほうが正確です。360は 2·2·2·3·3·5 に分解できて約数が24個もあり、そもそも分けやすい数です。
符合を見つけたときに、それを意味に変換するかどうか。ここは書き手の姿勢が出るところだと思っています。当サイトは符合は符合として出し、意味づけは読む人に預ける方針です。
フラワー・オブ・ライフと洛書は、同じ構造ではありません。三角格子と正方格子、6と8、1・7・19と1・9・25。数はどこも一致しません。
けれども、「中心を置き、そのまわりに等しい環を並べ、中心は数えない」という組み立て方は共通しています。洋の東西で、円を等分して世界を記述しようとしたときに、同じ発想にたどり着いている。一致しているのは数ではなく、考え方のほうです。
個人的には、無理に一致させるよりここが違う、と言えるほうが面白いと思っています。違いがわかると、それぞれが何を選んだのかが見えてくるからです。三角格子を選べば6が出て、正方格子を選べば8が出る。八方位という体系は、正方格子を選んだ帰結です。
三角格子 中心を a·(1,0) + b·(1/2, √3/2) に置き、原点からの距離で分類 距離 0 / 1 / √3 / 2 / √7 / 3 に、それぞれ 1 / 6 / 6 / 6 / 12 / 6 個 正方格子 チェビシェフ距離で分類し、各環 8k 個(k≥1) 接触数 平面で同半径の円が中心の円に接する最大数は6 最小公倍数 lcm(6, 8) = 24
図の円はすべてこの格子から生成しており、手で置いたものはありません。点にカーソルを合わせると中心からの距離が出ます。