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読みもの / 002

なぜ方位は八つなのか
── 八卦と、45度をめぐる分かれ道

八という数には理由があります。ただし「八等分の仕方」には流派で二つの立場があり、全周のちょうど6分の1で答えが食い違います。実在の79地点で数えたら17件でした。

2026-09-07 / 陰陽道ラボ

八という数は二つの道から出てくる

方位が八つなのは、なんとなく切りがいいからではありません。まったく別々の二つの理由が、どちらも8に着地します。

ひとつめ ── 2の3乗

八卦は、陰と陽の棒(爻)を3本積んだ図形です。1本あたり2通り、それが3本なので 2 × 2 × 2 = 8。八卦の「八」は、この組み合わせの数そのものです。3本と決めた時点で、8以外にはなりようがありません。

ふたつめ ── 3×3から中央を引く

九星の盤は3×3の9マスです。ただし中央(中宮)には方位がありません。北でも南でもない、盤の真ん中だからです。残りは 9 − 1 = 8 マス。これが八方位になります。

2³ = 8 と 3² − 1 = 8。由来はまったく違うのに同じ数になり、九星気学はこの二つを重ねて使っています。八卦の並びの上に、洛書の数を載せた──それが前回の記事で見た後天定位盤です。

八卦の並びは二つある

八卦をどう円周に並べるかには、先天八卦(伏羲)と後天八卦(文王)の二つがあります。方位に使うのは後天のほうですが、先に先天を見ておくと、後天が何を捨てたのかがわかります。

111・1110・2101・3100・4011・5010・6001・7000・8向かい合う卦は三本とも陰陽が逆数の和はすべて9
先天八卦(伏羲)。向かい合う卦は三本とも陰陽が逆で、数の和は9。破線が対の組。

先天の並びは完全に対称です。向かい合う卦は三本の爻がすべて反転していて、番号の和はどれも9になります。乾1と坤8、兌2と艮7、離3と坎6、震4と巽5。

さらに、爻を「陽=1・陰=0」として下から順に読むと、乾から坤までがそのまま 111、110、101、100、011、010、001、000 ── 二進数の降順になります。先天数は「8 − その二進数」です。

ライプニッツは1679年の時点で二進法を考えていました。1701年、北京にいた宣教師ブーヴェが、伏羲の卦の配列がライプニッツの二進法と一致することに気づいて手紙を書き、それが1703年にライプニッツのもとへ届きます。二進法の論文が印刷されたのは1705年でした。易から二進法が生まれたのではなく、別々に生まれたものが一致していたという順序です。

この対称性は美しいのですが、方位としては使われませんでした。使われるのは後天のほうです。

爻(下→上)先天数先天の方位後天の方位九星
1111北西六白金星
1102南東西七赤金星
1013九紫火星
1004北東三碧木星
0115南西南東四緑木星
0106西一白水星
0017北西北東八白土星
0008南西二黒土星

右の2列が、いま吉方位を見るときに使っている配置です。坎が北で一白水星、離が南で九紫火星、震が東で三碧木星──当サイトの計算エンジンが持っている定位盤と、一マスの狂いもなく一致します。中宮の五黄土星だけが卦を持ちません。方位がないからです。

先天から後天への移り方に、単純な回転はありません(実際に角度差を計算すると、卦ごとに45度・90度・135度・225度とばらばらです)。対称を捨てた代わりに、後天は五行と季節の巡りに沿った並びになっています。そちらは別の回に書きます。

本題 ── 八等分は45度か、30度か

ここからが実務の話です。八方位に分けるとき、どこに線を引くかで流派が分かれています。

立場四正(北東南西)四隅(北東・南東・南西・北西)根拠
45度均等説各45°各45°二十四山(各15°×3=45°)
30/60説各30°各60°十二支の12分割(各30°)

30/60説は、十二支を円周に等間隔で置いた12分割(各30度)が下敷きです。子=北、卯=東、午=南、酉=西がそれぞれ30度ぶん。残りの隙間を四隅に割り当てるので、四隅が60度になります。45度説は二十四山(各15度)を3つずつまとめて45度とします。園田真次郎系は2代目以降45度、伝統気学系は30/60というのが大まかな分布です。

では、この二つはどれくらい食い違うのか。計算すれば正確に出ます。

北東南東南西西北西
45度均等説の境界30/60説の境界判定が食い違う帯
実線が45度説、破線が30/60説の境界。赤い帯が、どちらの説を採るかで八方位の答えが変わる範囲。

境界は8か所すべてで、ちょうど7.5度ずれています。45度説の境界は 22.5°、67.5°、112.5°… と並び、30/60説の境界は 15°、75°、105°… と並ぶ。差は毎回 7.5度です。

食い違う帯は 7.5度 × 8か所 = 60度。円は360度なので、

全方位のちょうど6分の1(16.67%)で、二つの説は違う答えを出します。

しかも食い違い方は毎回同じ向きです。この帯では45度説が「北・東・南・西」と言い、30/60説が「北東・南東・南西・北西」と言う。四正が広い分だけ、45度説のほうが正方位を出しやすいわけです。

実際の行き先で数えてみる

理屈のうえで6分の1というのはわかりました。では、実際に人が行く場所ではどうなのか。当サイトが持っている全国の神社・霊場・温泉79件について、長野県佐久市を基準に両方の説で判定してみました。

79件のうち17件(21.5%)で判定が割れました。県庁所在地47件でも10件(21.3%)です。

行き先方位角45度説30/60説
北海道神宮16.8°北東
恐山菩提寺21.1°北東
二荒山神社(宇都宮)74.5°北東
成田山新勝寺107.2°南東
氷川神社(大宮)110.0°南東
三嶋大社162.7°南東
北口本宮冨士浅間神社163.7°南東
祐徳稲荷神社247.5°西南西
厳島神社250.5°西南西
太宰府天満宮249.5°西南西
雄山神社(立山)289.4°西北西

17件のうち11件を抜き出したもの。基準は佐久市(36.2593, 138.4890)、真北基準の大円方位。

とくに九州・中国地方はまとめて割れます。佐久から見ると太宰府も厳島も250度前後で、45度説なら「西」、30/60説なら「南西」。片方の説では吉方位、もう片方では凶方位、ということが普通に起こります。

それより大きいズレがある

ここで、どちらの説を採るかより先に効いてくる話をひとつ。

方位磁石が指す北は、地図の北ではありません。日本では磁石の北が真北より西にずれていて、そのずれ(偏角)は北海道で約9度、沖縄で約5度。本州の中ほどはその中間です。国土地理院は地点ごとの予測値を計算できる地磁気予測値計算サイトを公開しています。

45度説と30/60説の差は、境界にして 7.5度

磁石の北と真北の差は、7度前後

つまり、磁石を補正せずに方位を測ることは、流派をひとつ乗り換えるのと同じくらいの影響があります。

スマホの地図アプリや当サイトの位置情報取得は真北基準の緯度経度を返すので、この問題は起きません。気をつけるのは、家の中でアナログの方位磁石を当てるときです。

当サイトが採っている立場

吉方位ナビは45度均等説・真北基準で計算しています。二十四山との整合が取れることと、園田真次郎系の現行の扱いに合わせたためです。

ただし、これを唯一の正解として押し出すつもりはありません。そのため、

1. 方位角(度)そのものを表示しています。30/60説を採る方は、上の境界表と見比べれば自分で読み替えられます。
2. 境界から3度以内の行き先には警告を出します。どの説を採っても、境目に立つ場所は扱いが割れるからです。
3. 距離も同時に出しています。近い場所ほど、数キロの移動で方位が変わります。

流派の違いは、どちらかが間違っているというより、円をどこで切るかという取り決めの違いです。取り決めが違えば結論が変わる──その変わる範囲が全周の6分の1だと数字で言えることのほうが、どちらが正しいかを論じるより実用的だと考えています。

確かめ方

この記事の数字はすべて計算で出しています。

八卦  先天数 = 8 − (爻を下から読んだ二進数)
方位  真北基準の大円方位(球面三角法)
食い違い 0.05度刻みで全周7200点を総当たり
実地点  SPOTS 79件・県庁所在地47件を両説で判定

八卦と九星の対応表は、当サイトの計算エンジンが持つ後天定位盤と機械的に突き合わせて一致を確認しました。先天八卦の対称性(向かい合う卦の全爻反転・数の和9)も同様です。角度の分割方式については、複数の気学流派の解説を参照しています。

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